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肥満細胞腫(わんちゃんの場合)

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わんちゃんの肥満細胞腫は、発生が最も多い皮膚腫瘍です。(ネコちゃんでも二番目に多いと言われています。)
高齢犬での発生が多いものの、若くても認められることがあります。
皮膚に腫瘤を作り、多くは孤立性ですが多発することもあります。
ご自宅で気付いて頂くことも多い腫瘍ですが、サイズや発生部位、外観も様々で、わかりにくいこともあります。

腫瘍細胞内にはヒスタミンなどの顆粒が含まれており、刺激によりこれらが放出される(脱顆粒)ことで、腫瘍の周囲が赤く腫れたり(ダリエ徴候)、嘔吐、下痢、血圧低下など多彩な症状がみられます。
このように腫瘍が原因で引き起こされる全身症状を腫瘍随伴症候群といい、肥満細胞腫では大きな問題となり得ます。

肥満細胞腫

体幹部に発生した肥満細胞腫です。
腫瘍自体は小さなものでしたが赤く腫れるダリエ徴候がみられます。

診断

腫瘤の針生検(FNA)を行い、細胞を確認します。
細胞質内に特徴的な紫色の顆粒が確認されますが、時に顆粒が目立たず診断が難しいこともあります。
同時に好酸球が多く見られることもあります。

肥満細胞腫

腫瘍の針生検を行い、細胞を顕微鏡で確認したものです。
細胞の中に紫色の顆粒が沢山見えるのがこの腫瘍の特徴です。

腫瘍が肝臓や脾臓に転移していることもあるため、X線や超音波検査でも確認を行います。
転移が疑われる場合には超音波で確認しながらお腹の中の臓器にもFNAを行います。
また、血液中にも腫瘍細胞が認められることもあるため、血液検査も重要です。

これらの検査を踏まえ、肥満細胞腫は臨床的に以下のようなステージに分類されます。

WHO臨床ステージ分類
ステージ
  1. 0: 不完全切除されたのち組織学的に確認されたもの
  2. Ⅰ: 真皮に限局する単一の腫瘍
    付属リンパ節転移なし
  3. Ⅱ: 真皮に限局する単一の腫瘍
    付属リンパ節転移あり
  4. Ⅲ: 真皮の多発性腫瘍
    リンパ節の有無を問わず、大型で浸潤性
  5. Ⅳ: 遠隔転移のあるもの(肝臓や脾臓など)
    血液中や骨髄に腫瘍細胞が認められるものを含む
サブステージ
  1. a: 全身症状なし
  2. b: 全身症状あり

治療

治療は外科治療(手術)が第一選択です。
摘出した腫瘍の病理検査を行うことで、腫瘍が取りきれているかの確認や悪性度を評価します。
(肥満細胞は組織学的に以下のような3つのグレードに分類されます)

病理組織学的分類
Patnaik分類 グレード
1 低グレード(悪性度の低いもの)
2 中グレード
3 高グレード(悪性度が高いもの)

この結果により、必要であれば、追加の手術、抗癌剤による内科治療、放射線治療など、さらなる治療を検討します。

この他に、近年この腫瘍の発生に関わる遺伝子の異常が一部特定されており、その遺伝子異常を検出することが可能です。
この異常の有無により、分子標的薬という内服薬による治療も選択肢として考慮でき、その治療効果の予測も可能です。
腫瘍の発生部位の関係上、どうしても手術が困難な場合はこれらの治療から開始することもあります。

外科治療
この腫瘍は周囲や深部に広く浸潤することのある腫瘍であり、取り残した場合には再発の可能性があります。
そのため、腫瘍の周囲や深部に、充分な広さや正常組織を含めた摘出が推奨されます。
摘出した組織は病理組織学的な検査を行い、上記のグレード分類を行います。
同時に腫瘍の周囲が十分に切除されているかも判断し、万が一取りきれていない場合には、再手術が第一選択となります。
腫瘍のグレードが低い、もしくは中等度で、完全に取りきれている場合は予後が良いことがほとんどです。
腫瘍のグレードが高かった場合には以下の治療法を組み合わせて治療していくことも推奨されます。

内科治療
抗癌剤を用いた治療です。使用する薬剤にもいくつか種類があり、それぞれの効果や副作用も様々です。
病理検査を行った際、同時に遺伝子の変異の有無を確認しておくことで分子標的薬が適応となるかの指標とします。
この治療法は飲み薬のため、自宅での治療が可能で、副作用が少なく、時に高グレードの腫瘍にも良好な効果が得られます。
この他にも、脱顆粒に伴う様々な症状を抑えるための治療が様々あります。

放射線治療
専門の施設でのみ行われている治療のため、必要に応じて紹介を行っています。
術後にこの治療を行うことで、再発やリンパ節への転移を抑えることができます。
逆に術前にこの治療を行うことで、当初摘出が困難であった腫瘍を縮小させた後に摘出するという方法もあります。

この腫瘍は様々な場所に発生し、その発生部位によっても治療の選択肢が左右されることがあります。
皮膚の小さなしこりだけだと思っていたら実はお腹の中に転移のある可能性も否定できない腫瘍です。
また、腫瘍随伴症候群により引き起こされる症状も生活の質を著しく低下させることがあります。
もしも自宅のわんちゃんの体にしこりを見つけた時は、様子を見過ぎず、まずはご相談下さい。

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